間違った視点による、あ・ら・もーど


1話

戦い終わって約半年、東京ミュウミュウ達はキメラアニマの残党の回収任務に追われていた。
「それにしても、手がかかりますわ」
「前よりずっと忙しくなったのは確かね・・・」
「それもこれも、お前達が調子に乗って、いちごを宇宙に放り出したからだろうが!」
「お、落ち着いてください。白金さん」
「どうどう、なのだ」
「心配いらないわ。今頃あの2人は救世主として持てはやされているはず」
「まあ向こうで勝手に幸せにしてくれればいいんじゃありませんの」
「全く、お前達は懲りるという言葉を知らないのか」

「みんな、お待たせ!宇宙の海は俺の海、キラメキの海を越えて、グレートミュウ・・・」
みんと達が談笑していると、木の影から突然、人なつっこい声が彼女達の耳に飛び込んで来た。
「リボーンミントエコー!」
声の主は、いきなり服の裾を射られ、木に釘付けにされた。
「何すんのよ、みんと。抜けないじゃない!・・・え、ちょっと、歩鈴?」
さらに彼女は、ゼリー状の物体で固められた上に大木ごと引っこ抜かれ、水流で勢いよく
イギリスまで飛ばされて行った。
「なんなのよ、これーっ!」
「今頃きっと、いちごのおねえちゃん達はビッグベンの下でアツアツのラブラブなのだ」
「映画みたいでステキですね」
「・・・稜、胃薬です」
「悪い」

「おかしい。東京ミュウミュウの反応が五つある」
都内某所、秘密組織に集う若者達は、熱心にミュウミュウについての調査を行っていた。
「まさか、いまは四つのはずだ」
「いちばん強欲なミュウイチゴは、エイリアンの星にいったんでしょ?」
「なら、調べればいかがですか」
「公爵(デューク)・・・」
「地下にキメラアニマから作った怪獣の試作品があるじゃありませんか」
「その役目はぜひ僕にお任せを」
名乗り出たのはロイヤルハイネス。秘密組織「聖薔薇騎士団」の一員として、「公爵」と
呼ばれる人物の元で日夜世界制服のための会合にいそしんでいる若者の一人である。
「では、お任せしましょうか」
「御意に」
ロイヤルハイネスは、出かける前に突然何かを思い出した様に立ち止まった。
「公爵・・・」
「なんでしょうか」
「爆忍ロケットマンと言うのをご存知ですか」

「稜、キメラアニマが現れました」
「聞いたかお前達。東京ミュウミュウ出動だ!!」
「了解ですわ」
「はい」
「なのだ」
「・・・」
キメラアニマ出現の報を受け、ミュウミュウ達は一斉に現場に駆け出して行った。
「いました、あそこです」
「今まで見た事のないタイプね」
「ようこそ面白可笑しいミュウミュウ達・・・」
「そんな・・・きゃあ!」
「僕の名はロイヤルハイネス」
「この子、なかなか手強いですわ」
「君達の頭数を確認しに来た」
「歩鈴にまかせるのだ。プリングリングインフェルノ!」
「ひぃ、ふぅ、みぃ・・・」
「今よ、リボーンザクロスピュア!」
「やはり4人で正解の様だな」
「さすがですね、みなさん」
「ではまた会おう」
ロイヤルハイネスは、こそこそ隠れながら数を数えていたため、ミュウミュウ達と一度も
顔を突き合わせる事なく去って行った。

「『カフェミュウミュウ本日4時よりケーキ食べ放題』・・・えっと、ここね」
その頃カフェには、お嬢様学校の制服を着た少女が寄り道をしに姿を現わしていた。
「何にしようかな。チョコブラウニー?モンブラン?一度に10個食べちゃうもんね」
「チーズケーキはあるかな・・・あれ?『本日は閉店いたしました』になってる」
「なあんだあ・・・お楽しみはまた今度ね」
「って、今まだ3時半じゃない。一体どうなってるの?このお店は」


困った事になりました。数ヶ月間このコンテンツをご無沙汰してた間、私の頭の中で元気
だったのは一人だけだったのですが、よりにもよってそのいないハズの人が帰って来て
しまうとは。
しょうがないんで用意しておいたネタを逆のベクトルに使ってみた所、ようやくまわりの
キャラも動き始めてくれました。プロの先生方が言う、キャラクターが自己主張を始める
領域にはほど遠いですが。使えそうなパーツをごはんつぶでくっつけてるだけだしね。
道なき道を脱線しかねない見切り発車もいいトコですけど、まあ一つごひいきに。
あ、忘れないうちになかよし本誌の感想を。
公爵の正体ですが、若者である事はいきなり最初に説明されてるんで解かりきってたこと
なんですけど、あんなに早く半分顔見せするとは思いませんでした。
いかにも侑っぽく見える伏線が張られているのですが、まさか似た様な設定を二度も使う
とは考えにくいですので、これは引っ掛けでしょう。
では誰かと聞かれても、情けない事にちょっと候補者が思いつけないのですが、個人的には
あのとんがり帽子の下は絶世の美女に違いないと根拠レスに妄想してます。


2話

「圭一郎、少し気になる動きがあるんだ」
「この前のキメラアニマの事ですね」
「ああ、今までとは異なるデータが検出された。誤差の範囲かも知れないが」
「新種のキメラアニマの可能性もあり得ますね」
「いちごが帰って来れない今、新たなるμプロジェクトの適合者を探す必要がありそうだ」
「あらあら、稜も大変ですわね」
「他人事みたいに言うな!お前達のせいだろ」
「あたし達は女なの。決して戦士とは言えない」
「そう言う問題じゃないだろ!」

「イギリスの山奥で修行して、代打バッターの魂宿し、目指すは未来の大リーガー!」
「青山くんといつもラブラブ、愛の戦士のレインボーミュウ・・・」
突然、ハイテンションな声がカフェ内に響き渡った。
「リボーンレタスラッシュ!」
声の主は、水流により天井を突き破って空高く打ち上げられた。
「リボーンプリングリングインフェルノ!」
そしてさらに、落下地点に置かれた結界の弾力でバウンドさせられた。
「またコレ?言っとくけど、ビックリしたら宇宙まで飛んでったってのはナシだからね!」
「解かっていますわ、そんな事!」
みんとは、ざくろを抱えて空中に牽引した。
「リボーンザクロスピュア!」
「もしかして、またイギリスに逆もどり〜!?」
「虹が綺麗ですねぇ」
「お前らなあ・・・!」

「稜、準備が出来ました」
「何なのだそれは。五円玉なのか?」
「コックリさん、コックリさん、次のRDA遺伝子適合者は誰ですか。おられましたら・・・」
「ええっ!今までそんな方法で決めてたんですか?」
「これは地球の意思なんだ、偶然なんかじゃない」
「偶然ですわ、偶然!」
「し・ら・ゆ・き・・・」
「白湯木縁・E?」
「ずいぶん日本人離れした名前なんですね」

「ではごきげんよう」
「ごきげんよう」
「制服にあこがれて中学受験、絶対不可能といわれていても晴れて合格!」
「でも・・・ここまですげーお嬢様学校だとは思わなかったっスよ」
白湯木縁・・・白雪ベリーは、慣れない学校生活にため息をつきつつ、とほとほと帰宅していた。
「あいつか・・・まずはきっかけを作らないとな」
白金は、カフェの住所と電話番号がプリントされたクッキーを忍ばせ、ベリーを待ち構えていた。
「よし今だ。おい、そこのお前・・・」
「あっ、靴の紐がほどけてる」
ベリーが突然しゃがんだため、白金は石段の上から下までを勢いよく転がり落ちて行った。
「あ、あのっ、えっと・・・大丈夫ですか?」
「ああ、ちょっとケーキにけつまづいて滑って転んだんだよ」
「ケーキ?こんな所でですか?」
「職業柄、ケーキには縁があってな」
「ケーキの早食いチャンピオンさんだったりとか?」
「お前、あいつと同じ位、ノリが軽いな」
「あいつって・・・あの?」
「それ・・・やるよ」
白金は、袋詰めされたクッキーを手渡そうとしたが、見事粉々にそれは砕け散っていた。
「新製・・・いや、やっぱり何でもない。んじゃ」
目的を果たさずに、白金はすごすごと退散して行った。
「何だったんだろう、あの人。関わり合いにならない方がよさそう」

「『カフェミュウミュウ本日4時よりケーキ食べ放題』・・・えっと、ここね」
ベリーは、先日と同じくカフェに寄り道をしに姿を現わしていた。
「よかったあ、今日はちゃんと開いてるみたい」
早速、ベリーは店内に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませー。あれ、どうなさいました?お客様」
「きゃあああっ!あなたはさっきの・・・」
「・・・よう」
ベリーは、白金の顔を見るなり悲鳴をあげ、脱兎のごとく逃げ出した。
「ま、待て!」
この機を逃さまいと、すかさず白金は謎の装置のスイッチを押した。
謎の装置から発射された謎の怪光線がベリーを襲う。
「うお〜っ。制服姿もかわいーぞ、ベリー」
突然、ベリーの幼なじみの目黒侑がしがみついて来て、2人一緒に怪光線を浴びた。
「なんてこった。2つの遺伝子が不適合者の体に入った場合・・・」
「一体なんの動物になっちゃうんですか!?」
「動物にはならない。女になるだけだ」
「げ」
「ミョーに似合ってるかも・・・じゃなくって、これからどうするの!?」
「目黒侑に何かあったら俺を殺せ。その位の覚悟は出来ている」
「もうとっくに何か起こってるよ!」
「いきなり設定変えちゃっていいんですか?」
「いいかげんにして欲しいわね」
「歩鈴は、わりとたのしーのだ」
「どうせ行き当たりばったりですもの。なるようにしかなりませんわ」


はいどーも。新キャラの侑クンですが、根が真面目過ぎてどうにもギャグにならないので
女の子になってもらいました。当分の間、元に戻る事はないでしょう。
後はベリーちゃんをどう動かすかですね。今の所、環境の変化に振り回される役でしか
ありませんので。征海先生の頭の中ではすでに、敵役の色男達と同じくイメージが固まって
いる物かと思われますが。
それを考えると本誌での最強さんの復帰は早すぎたかなと言う気がしないでもないです。
まあどうせミュウミュウですけれども。ちなみにウチでの仕打ちは単なるイジメです。
あ、今月号の白金ですが、無抵抗なのはどう見てもワザとですね。いくら侑が腕が立つ
(と思われる)と言っても、白金に勝てるとは考えにくいですから。
なんともイヤミな奴です。まああれが彼なりに精一杯の誠意なのですが。


3話

「・・・遅いぞ」
「すまない。ドラマの収録がおしてね」
「あー、それ『火曜サスペンス劇場・家政婦は見た、かっぽれ殺人事件』ってやつでしょ?」
都内某所、聖薔薇騎士団のメンバー達は日夜世界征服のための会合にいそしんでいた。
「それが例の物か」
「ああ、半年前に日本を去ったエイリアン達が残した物」
「それがこの東京ミュウミュウ生写真の山だ」
「しかしピンクのだけが異常に多いな」
「あ、解かった!そいつが一番強かったんだよ、きっと」
「なるほど一理あるな」
一同は大いに納得してうなずき合った。
「ところでこの昇陽軒のミソラーメン、素晴らしい仕上がりだが少々塩が効きすぎているな」
「この天安軒のワンタンメンも、豊かな味わいだが少々麺がゆで過ぎているようだ」
「確かに・・・いささか季節外れだが、ぜひ新鮮な鍋焼きうどんなど食したいものだね」
「わたしはトーストがいいと思いますね」
「公爵・・・」
「では明日の会合のメニューは・・・」
「トースト!」

「なんだったんだろう、あのお店。ヘンな人はいるし、ヘンなビームは撃たれるし」
「あれ以来なんかヘン・・・な気がする。気がする、じゃなくって、気っ気っ気になるーっ!!」
白雪ベリーは身の回りに起きた異変についてあれこれ思考をめぐらせながら歩いていた。
「絶対ヘン!なによりたすくが女の子だなんてありえないーっ」
ベリーの思考が臨界点に達しようとした時、キメラアニマの残党が彼女の前に姿を現わした。
「うっそー!こんな所にエイリアン?」
「ストロベルベル!」
その時、ここぞとばかりにしゃしゃり出てきたネコなで声の攻撃が、キメラアニマをたじろかせた。
「倫敦どんより晴れたら江戸。東京生まれの東京育ち、この桃・・・」
「リボーンプリングリングインフェルノ!」
続けざまに歩鈴が攻撃を放った。しかしそれは声の主の方に向けられたものだった。
声の主は、素早くジャンプでそれをかわした。
「へへーんだ、いつまでも同じような手はくらいませんよーだ」
「歩鈴ちゃんキーック!」
相手が調子に乗ってる間に、歩鈴は結界を踏み台にして近づき、跳び蹴りをかました。
「いきなりそう来るかな〜・・・!?」
「手はくらわなくても足はくらったのだ」

「ケガはないですか、ベリーさん」
「東京ミュウミュウ?あとなんかもう一人いたよーな・・・」
「そう。あなたの仲間・・・よ」
「もう一人というのは目の錯覚ですわ」
「仲間って、あたしが・・・!?」
「あなたはミュウミュウになったの」
「お近づきのしるしに、これをプレゼントするのだ」
歩鈴はポケットから変身ブローチを取り出し、ベリーに手渡した。
『変身するんだ、白雪ベリー。いや、ミュウベリー!』
「わっ、ブローチがしゃべった!じゃなくって通信機?この人誰?」
「大丈夫ですよ。落ち着いて、心の中に浮かんだ言葉を唱えてみてください」
「えっと・・・こうかな?変・・・身」
「声が小さいですわ!」
「気合も足りないのだ!」
「口づけするのも忘れない様にしなさい」
「は・・・はいっ、ミュウミュウベリーメタモルフォーゼ!」
みんと達の友情の激励を受けて、白雪ベリーはミュウベリーへと変身を遂げた。
「そう言えば、もう一個渡すモノがあったのだ」
歩鈴はポケットから奇妙な形のマスコットを取り出した。
「な・・・なにこれ・・・」
『R2003型だ。名前はお前がつけてもいが、もう既にウチャと言う名前がついてる』
「さあ、あっしを使ってくんな!!」
ウチャは、ベリーの手の中で武器へと変形した。
それと同時に、ひるんで動きを止めていたキメラアニマがベリーに向かって突進してきた。
「か、怪獣!エイリアン!た、食べられちゃう!」
「あなたがやるのよ」
「自分を信じて。自分を助けたいという思いが、そのまま力となるはずです」
「えっと、ええい!リボーンラズベリーチェック!」
『違う!リボーンラブベリーチェック!だ』
「ど、ど、どうして、あたしの頭の中の言葉を知ってるわけっ?」
「さっさと攻撃しやがらねーか、このすっとこどっこい!」
「そうだった、いっくみゃー!!リボーンラブベリーチェック!」
べりーは間一髪のタイミングでキメラアニマを退治するのに成功した。
『ま、初めてにしちゃ上出来だな』

「ホントにあたしミュウミュウになっちゃったんだ」
「さ、行きましょう」
「え、どこへ?どこへ行くの?」
戦い終わりとまどい続けるベリーを連れて、ざくろ達はある方向へと歩いて行った。
「着きましたわよ」
「わたし達、ここで働いているんです」
「ここって・・・カフェミュウミュウ?じゃあ、あのブローチからの声はもしかして」
ベリーは身の危険を感じて回れ右をした。
「ケーキ食べ放題・・・」
「え?」
「ここで働いてると、おいしいケーキがいっぱい食べられるのだ」
「アフタヌーンティーも優雅に楽しめますわよ」
「食べ過ぎるとウエストが気になっちゃいますけどね」
「ケーキ?食べたい!でもなんか怖い人がいるし・・・あーっ、なんか頭がーっ!」
「まあまあ、ややこしい話は後にして」
「まずは一名様ご案内なのだー」
ミュウミュウ達はベリーの両脇をガッチリと固めると、無理矢理カフェに連行した。

「よう」
「ようこそカフェミュウミュウへ」
「あ、はい、えっと、その・・・よろしくお願いします」
「ところであなた、何の芸が得意なの?」
「え?芸ですか」
「地球の平和を守る戦士たる者、芸の一つや二つは持っていないと務まりませんわ」
「そっそっそっ、そんなーっ。あたし元々ただの一般人だしっ」
「でも今はミュウミュウの一員である事に変わりはないのだ」
みんなに催促され、ベリーはわたわたしながら一生懸命ネタを考えた。
「あ、そうだ。ケーキを一度に10個食べる事ができます」
「10個も!それはすごいですね」
「ベリーさん、これでよろしければ。店の余り物ですけれども」
「わあっ、おいしそー!これ全部食べていいの?いただきまーす」
「お待ちなさい!」
「え?」
「まさかそれを1個ずつ食べていくつもりじゃないでしょうね」
「そんなの全然すごくないのだ」
「え?え?」
「芸とおっしゃるのでしたら、これ位はやっていただかないと・・・!」
「ええーっ?」
みんと達3人は、よってたかってベリーの口にケーキを10個全部、一度に押し込めた。
「おいしーい、でも苦し−い。あーっ、頭クラクラするーっ!」

「ん・・・」
しばらくして、ベリーはケーキまみれのままで意識を回復した。
「悪かったな気絶させてしまって。まさかあんな展開になるとは思わなかったんだ」
「みゃ!?あたし、この人達の前でケーキを喉に詰まらせて卒倒した・・・?」
「うっそおおおん、穴があったら入りたいよーう!!」
「でもケーキは全部ベリーの胃袋の中に入っていったのだ」
「なかなかやるじゃない」
「根性だけは認めてさしあげますわ」
「歩鈴も負けてはいられないのだ。よーし、歩鈴は豆大福百個一気食いに挑戦するのだ」
「みなさん、やり過ぎです!」
「れたすのおねえちゃんは胸が大き・・・」
「わーっ!歩鈴さん、突然なんて事言い出すんですか」
「何がいけないのだ?歩鈴はとてもうらやましいのだ。今すぐ分けて欲しいくらいなのだ」
「稜、これでよかったんでしょうか・・・」
「ああ?今のは見なかった事にするんだ」


とりあえずウチでのベリーちゃんへのスタンスは、みんととざくろにとってはいちごが復帰する
までの間はオモチャ扱い、歩鈴にとっては遊び相手、れたすは新入りに対して遠慮してるんで
オロオロ係、といった所でしょうか。
白金は何だか怒ってばっかりですね。本物とはベリーちゃんにとっての印象が正反対になって
しまっちゃってますし。
まあギャグって事で大目に見てくだせえ。


4話

「おはよーパパ」
「おはよーございますベリーさん。最近、珍しくちゃんと起きてきますネ」
「うん、なんだか音がうるさくて・・・」
「ベリー、おっはよーっ」
けたたましい足音を立てて、目黒侑が白雪家のリビングに乱入してきた。
「うお〜っ、朝っぱらからかわいいぞ、ベリー」
「たすく!!あんたねえっ、いくら幼ななじみだからって・・・」
「そんな事ゆーなよ。俺達は生まれた時からずっと一緒に暮らしてきた仲じゃないか」
ベリーの文句を軽くあしらうと、侑はギターを抱えて歌い始めた。
「ではベリーのかわいさを称えて・・・愛しても〜憎んでも〜ルルルル〜ルルルルル〜♪
「ヒトん家で騒ぐなあっ!」
「細かい事は気にしない気にしない」
「気にするってば!そもそも毎日毎日ウチに不法侵入してくんなーっ!!」
「いーじゃん別に。いずれは結婚して一緒に・・・」
「相変わらず冗談がお上手ですネ」
「おはよーございます、おとうさん。今日もエプロン姿が素敵ですね」
「たすくさんこそ、セーラー服がよくお似合いですヨ」
侑に誉められ、ベリーの父は社交辞令を交わした。もちろん侑が突然女の子になったとは
知る由もないので、自分と同じく女装趣味に目覚めたと思っている様である。
「ああっ、もうこんな時間」
ベリーは、ろくに朝食も取らずに家を飛び出した。
「ベリー、忘れ物!」
侑はベリーに向かってトーストを放り投げた。
「ありがとなのだーっ」
突然、サルの様に身軽な少女が現れ、曲芸ばりのジャンプでトーストを横取りした。
「あたしのトースト返せー!・・・って、ミュウミュウのみなさん?」
「おはようございます」
「今日から、あなたと同じ学校の生徒になったの」
「さ、行きますわよ」
「え?今日からって何でこんな時期に?受験は?募集枠は?」
混乱するベリーを引き連れ、ミュウミュウ達は代官山学園に向かった。

『あのかたは藤原ざくろさまではないかしら?』
『周りの方々は何だかちんちくりんだったり底意地の悪そうな方ばかりですわね』
お嬢様学校にそぐわぬちぐはぐな雰囲気の集団は、早速生徒達の注目を集めていた。
「なんかすごい言われような気が」
「はじめましての挨拶に、みんなで南京玉すだれなのだ、ベリーも手伝うのだーっ」
「えええーっ」
ベリーはいきなり南京玉すだれに強制参加させられた。何とかついて行こうとしたものの・・・
「ああっ!」
何もない所でつまづいて転んだれたすの巻き添えを食って、芸をメチャメチャにしてしまった。
『ベ、ベリーさま・・・突然何をなさるのかと思えば・・・』
『日本の恥ですわ、伝統芸能に対する侮辱ですわー!』
「きゃああっ、違うのこれはこの人達がーっ」
「お茶の用意ができましたわよ、おねえさま」
「あらためて見ると、なかなかいい学校ね」
「学び舎を眺めながら飲むお茶は格別なのだ」
「はああ・・・みんなすごいヘンな人達だなあ。なんだか先行き不安になってきちゃった」

一方、都内某所、聖薔薇騎士団のメンバー達は今日も世界制服のための会合にいそしんでいた。
「新たなミュウミュウが誕生した様だ」
そうつぶやくと、彼らは白雪ベリーの写真をテーブルの中心に広げた。
「でさ、こいつ何の動物なの?グリズリーベアだったりとか」
「いや、これはパジャマだな」
「ああ、パジャマだ」
それは、単なる隠し撮りの写真であった。
「ところでエースコックのわかめラーメン、素晴らしい仕上がりだが少々麺にクセがあるな」
「そう?ボクは結構好きだけどな、それ」
「このカレーどん兵衛も、豊かな味わいだが少々ダマが出来過ぎているようだ」
「代官山学園の自販機に置いてある焼きそばUFOにカツを乗せて食すると言うのはどうでしょうか」
「公爵・・・」
「料理長はぜひ僕にお任せを」
複雑な注文を引き受けたのはロイヤルハイネス。聖薔薇騎士団きつての、叡知、博愛、優美を
兼ね備えたお嬢様マニアである。
「とれたての焼きそばUFOにぴったりのとんかつソース、きっと諸君にもご満足いただけるかと」
「では、お任せしましょうか」
「公爵・・・」
ロイヤルハイネスは、出かける前に突然何かを思い出した様に立ち止まった。
「なんでしょうか」
「最近のアニメには、スラストとか言うのがいるらしいです」
「昔もいましたよ」

「皆様ちょっとよろしくて?今から、1ヶ月の特別講師にこられた先生をご紹介します」
「秋月友禅です。よろしく」
「秋月先生はまだ17歳ですが、すでに海外の大学をご卒業され・・・」
「(やはりお嬢様はいい。全身にあまねく気品を行き渡らせ、高貴な若さを持つ・・・)」
「イグノーベル賞の候補にもなられたとても聡明な方でいらっしゃいます」
「(そう・・・これは美の象徴!その棘は、引き寄せられし者に甘き痛みを与える)」
「主に研究されているのは『世界征服とセーラー服の民俗学的考証』・・・」
「(パーフェクト!ここはまさしくシャングリラ・・・美の本質を理解するにふさわしい)」
「秋月先生・・・?」
気が付くと彼は、教卓の上に多量の鼻血を垂らしてした。
「それでは今から特別授業の方に入りましょう」
秋月先生は、あわてて血の付いた教科書を開いて、生徒達に見せた。
「さて質問。君にはこれが何に見えるかな?」
「・・・鼻血?」
「これはロールシャッハ・テストという心理学の試験です」
「まあ、そうでしたの」
「知性とユーモアにあふれた素敵なお方ですわ。ねえ、ベリーさま」
「・・・そうかなあ、確かにかっこいいけど、なんかいやらしい感じがする」

「自販機は・・・ああ、あれか」
休み時間、秋月先生はカップ焼きそばを買うために自販機の前に立った。
「まずはコインを入れて・・・おっと、しまった!」
彼は、100円玉を自販機の下に落としてしまった。
「くっ、あれが無い事には・・・優美さには欠けるが仕方あるまい」
仕方なく彼は、棒きれを片手に地面に這いつくばった。
「秋月先生・・・?」
その瞬間、通りかかったベリーと彼はバッチリ目が合った。
「きゃあああっ、変態ーっ!」


ブッ壊しついでにいじくってみた所、ただ単に騒ぎたいだけの迷惑なヤツになっちゃいました。
本物の方のいい男っぷりが台無しですね、ウチでは女ですが。侑ファンにはごめんなさいです。
ロイヤルハイネスも、自信家のナルシストのハズが、ロリコンの小心者みたいになっちゃいました。
いきなりあさっての方向につっ走っちゃって、収集つくのかなあ、コレ。
で、なかよしの感想。ベリーの父ですが、侑の台詞で強調されるまで、素で気づきませんでした。
人間、見かけに結構だまされるモンなんですねえ。


5話

「変態・・・この僕が?そんなはずはない。ちゃんと誤解を解いてあげよう」
秋月先生は、冷静に危機的状況に対処しようとして立ち上がった。
しかし、手にした棒きれをスカートの端に引っ掛けてしまった。
「いやっ、へんったあいっ!!
「お、落ち着きたまえ白雪くん。よく見ると、君は綺麗な髪の色をしているね」
「あっ、おばあちゃ・・・祖母が名古屋出身で・・・」
「瞳も不思議な色だ。瞳とは、己の心の中を映し出す鏡の様な物」
「さあ、僕の瞳を見てみたまえ。何が見えるかな?」
「何か文字のような物が見えます」
「文字・・・?」
「『やはりお嬢様はいい。ここはまさしくシャングリラ』・・・いやっ、やっぱり変態っ!!」
「くっ、たかが子ウサギの分際で、僕のプライドに傷をつけるなんて・・・」
秋月先生はベリーの目の前で、白塗りの男へと姿を変えた。
「あなたは一体何者?もしかしなくても本物の変態さん?」
「変態ではない。僕の名はロイヤルハイネス。近い将来、試験に出るから覚えておきたまえ」
「僕の使命は君の・・・白いミュウミュウの抹殺のみ!」
ロイヤルハイネスは、右手をあげると蝙蝠型のキメラアニマの群れを召還した。
「白?いやあっ・・・じゃなくって、どうして・・・」
「キメラアニマだ。ミュウベリーの出番だぜ、お嬢ちゃん」
「でも、その・・・ほら、変質者はやっぱ警察に・・・」
「ケーキ食べ放題」
「おうよ!ミュウミュウベリーメタモルフォーゼ!」
ウチャの口車に乗せられ、ベリーはミュウミュウに変身した。

「うお〜っ、ミュウミュウ姿もかわいーぞ、ベリー!!」
突然、目黒侑がベリーに抱きついてきた。
「たすく!!一体いつからこの学校に?」
「ベリーがスカートおさえてた時から」
「ぎゃーっ、それって一部始終じゃん」
「今日もベリーに抱きつけた事だし、さ、帰るか」
「あっさり帰るなーっ!」
「やれやれ、なかなか騒がしい子ウサギだな」
闖入者とベリーの騒がしいやり取りに、ロイヤルハイネスは飽きれ返った。
「愉快なロンドン、楽しいロンドン、おかし弁当はンが付かない!」
「今度は一体何だ!」
もっと騒がしい闖入者の出現に、ロイヤルハイネスは激しくうろたえた。
「リボーンラブベリーチェック!」
「それが先輩に対してする事かあ〜っ・・・!」
ベリーは反射的に声の主を攻撃し、海の向こうまでふっ飛ばした。
「あ、あれ?あたし何やってんだろ」
「お見事ですわ」
「それでこそミュウミュウの一員ね」
「ミュウミュウのみなさん・・・」
「わたし達がいる限り、この学校をあなたの思い通りにはさせません!」
「くっ・・・まあいい、子ウサギの仲間は所詮子ウサギ、まとめて葬ってやろう」
ロイヤルハイネスは、キメラアニマの群れに命令をくだした。
「おとなしくすれば痛い目に合わずに楽に死ねたものを・・・ん?」
しかし、彼の下僕達は命令通りに動く事が出来なかった。
「キメラアニマは歩鈴が全部つかまえたのだ。昼間だから動きがニブくて楽勝だったのだ」

「焼きそばUFOはまだー?トンカツはもう買っちゃったよ」
「また変態さんが・・・?」
新たに、道化師の様な衣装で同じく顔を白塗りにした少年が、姿を現わした。
「ハッピーチャイルド・・・」
「もう、ロイヤルハイネスはすぐ前の事を忘れちゃうんだから。公爵が言ってたっしょ?
忘れないように手のひらにでもメモっとけって」
「ま、頭も悪かったよねー、昼間なのに夜型のキメラアニマを使っちゃうなんてね」
「そんな意味のない悪態は結構だ。それより、100円玉を貸してくれないか」
「仕方がないなあ。利子は1日五割だからね」
「早くしてくれないか。僕だってヒマじゃないんでね」
ロイヤルハイネスは、ハッピーチャイルドから小銭を受け取ると、カップ焼きそばを購入した。
「また会おう、ミュウミュウの諸君」
「ばいばーい」
ようやく買い物を済ますと、聖薔薇騎士団の2人は姿をくらました。

「えっと、危ないヒトから助けていただいて、ありがとうございました」
ベリーは形式ばったお礼を言うと、そそくさとその場を離れようとした。
「お待ちなさい」
「あなたに用があるの・・・」
みんと達は、ベリーを立派なドアの前に連行した。
「ここって、理事長室?さっき必殺技使った時、壁に穴開けちゃったのがマズかったのかな」
「でもどうやって説明すれば・・・あの、やっぱり・・・」
ベリーのとまどいをよそに、彼女達はさっさとドアを開いた。
「・・・よう」
「あっ、あなたは・・・!」
理事長室の椅子には、白金が不適な態度でふんぞり返って腰掛けていた。
「どうしてあなたがこんな所にいるんですか!?」
「単なる偶然だ」
「絶対不自然、偶然だなんてありえないーっ!」


活字を拾ってみると、ロイヤルハイネスって何だかいちいち偉そう。こりゃあこっちでは妙に
スケールが小さくなるワケだ、道理で。からかい甲斐はありまくりでした。
あ、そうそう。なかよしの感想ですが、理事長の存在については前の月にちゃんと伏線が
張られているんですね。ふてぶてしくも理事長室に奴が鎮座してやがったのには、いかにも
ミュウミュウらしくて大笑いさせていただきました


東京ミュウミュウ目次に戻る

トップに戻る