大教授ビアスとは何だったのか、 コンテンツを立ち上げた当時は天才さん達を遠回しに茶化したりしてきましたけれど、 あれから20年近く経った現在、便利な言葉が発明されたり、状況が少し変わった事により、 ようやく理解出来た事があったりしましたので、それらを踏まえて書いて行こうと思います。 まずビアスの目的、なりたかったものは何か、劇中に於ける描写を探すと、 自分をあがめる者だけがいる世界を作る事と、寿命を延ばす事に行き当たります。 ストレートには神です。恐獣ヅノーを巨大化させる時にはっきり言ってます。 自分に皆をペコペコさせるのに必要なのが、洗脳そのもののギガブレインウェーブで、 パーツとなる12個の千点頭脳を欲してビアスはせっせと作成していましたが、 その千点頭脳は今風の言葉に置き換えると「声のデカいバカ」なのではないかと思います。 なんだか凄そうな人達が皆言うんだからビアス様は偉いに違いないと言う「思い込み」 これがギガブレインウェーブの正体です。 千点頭脳とはビアスの嘘を大声でがなり立てるだけのスピーカーに過ぎないのです。 スピーカーは多い方が良い、だから12個必要だった、 それにうってつけなのが「勉強のできるバカ」なのです。 凄そうに見える上に、やってる事を疑ってませんからね、特にケンプ。 マゼンダの方は私利私欲がボーダー越えしちゃった人でしょう、疑ってはいましたから。 事実なんかどうでもよく、なんだか凄そうに見えればいい、ビアスの嘘を信じてればいい、 だからビアスの採点基準はデタラメでいいかげんなものだったのです。 「百点満点のバカ」が出来上がればいいのですから。 テストの勉強だけさせられてた、あるいはテストの勉強に意識を向ける様に強要された者は、 目の前の範囲の物しか理解出来なくなります。 例えるならば、テストの四角い紙のすぐ隣に正解が置いてあっても全く気付けなくなります。 「勉強は出来るけど仕事は使えない奴」が出来上がるのは、そのためです。 視野狭窄に陥ってるので、隣にある正解が本当に見えてないんです。 ケンプの離反は、文字通りに自分が「馬鹿にされていた事」に気付いたからです。 嘘の世界を作るためだけに一生懸命勉強させられてたんですから。 人を馬鹿にするにも程があります。 武装頭脳軍ボルトは、嘘を信じ込ませるための教育を行う、ただそれだけの組織でした。 その姿勢は、露骨な嘘をしたためたボルトバイブルに端的に示されています。 あれはバカ正直に書いてある分、現実の教科書よりも良心的なんですけどね。 コンテンツ立ち上げ当時、コイツらまだまだ戦えるんじゃねえか? と思ったのもそのはず、 詰め込みだのゆとりだのはどうでもいい目先の事に過ぎなかったのです。 ビアスの嘘はギガブレインウェーブによって大人の世界にも繋がっているのですから。 だからライブマン達は問いかけていたのです「君には聴こえないのか」と。 自分が一番偉いのだとギガブレインウェーブと言う電波を使って宣伝し、 ただそれだけを信じ込ませるために、ボルトと言うシステムを使って嘘の教育を施す、 これがビアスのカラクリなのです。 ビアスは虚構と思い上がりのメタファーだと言えるでしょう。 それに気付いた時に大教授ビアスのカリスマは崩壊します。 後付けの偶然ですが、ギルドスとブッチーが自作自演と言うのはよく出来た皮肉でした。 うわぁギルドスの死が見せしめなのもよく出来てやがる、マジかよ。 ビアスのもう一つの目的、寿命を延ばす事、若返りについて、 最近、マウスの実験で若い血液を輸血すると一時的に若返る事が確認されてますけれど、 それは余談ですので触れずにおいて、何のメタファーであるかと考えると、 おそらく二つの意味があるのではないかと解釈出来ます。 一つは若者を自分の目的のためだけに使ってしまってる事。 これは「若者の時間を奪ってる」に等しいです。それ故のドレイン描写かと思います。 もう一つは「人生のやり直しの強要」です。 ビアスの千点頭脳による若返りは、ちょくちょく人生をやり直してるとも取れます。 その度にビアスで、ケンプが張切り過ぎて子供にしちゃった時までビアスでしたけど。 子供になったビアスが、わざわざ勉強勉強繰り返し言ってたのはですね、 尾村豪の少年時代と勉強を強要する母の姿を同時にビアスに重ねているからなんです。 だから、めぐみの口からビアスが考えてるかどうかすぐには分からない言葉が出てきたんです。 「また人生をやり直せるかも知れない」 自分が出来なかった事を、子供にはさせてあげたい、なんて思っても 視野狭窄なもんだから、同じ間違いを繰り返してるだけで進歩が無い。 だからビアスの忠臣であるガッシュの目には美しいものは何一つ映ってなかったのです。 おかしなものしか見えてなかったのですから。 「教育虐待」という言葉をご存じでしょうか、個人的には数十年早く言っとけよ! 子供の頃から何回おかしいっつったと思ってんだよ! って話ですが、 そこには、昔の言葉で言う所の教育ママの問題点が、ほぼストレートに指摘されています。 いい学校? いい生活? そんな物お金に目が眩んでるだけです。お金教、ゼニクレイジーです。 お金に脅迫されずに、なぜこんな不自然なシステムが組まれているのか考えて下さい。 本当の仕事や勉強はそこから始まります。 私事ですが、時間的にも体力的にも、自分がやれる事の数の限界が見えて来た今、 千点頭脳の一人が言った「僕の青春を返して」の言葉が重くのしかかって来ます。 一年で忘れる紛い物のゴミスキルなんぞに時間を取られず、 自分がやれる事に使える時間があったのではないかと。 もしこれを読んでる中に、お子様をお持ちの方がいらっしゃいましたら、 お子様にはケンプ達の様な間抜けな目には会わせないでやってください。 小学4年生の頃からおかしいと思い続けていたにも関わらず、 手遅れになってからようやくスタート地点が見えてきた老人からの切なる願いです。 話をビアス本人に戻しましょう。 自分だけが一番、他人に犠牲を押し付ける、これははっきり言って我儘です。 大人の取る行動ではありません。ビアスは我儘な子供なのです。 だから最終回前で子供に戻ったのです。 イケボダンディと科学力の皮を剥いでしまえば、精神が子供のまま年をとった哀れな老人、 それが大教授ビアスの正体なのです。 |